着物のお手入れ

大切な着物だから
長く楽しみたい

着物はお手入れをしながら、一生、あるいは2世代、3世代にわたって受け継がれ、着用されるものです。お手入れさえすれば、本当に長く愛用できるものなのです。そこで、「目指せ!お手入れ上手」 ポイントをご紹介します。

帰宅をしたら自分でお手入れ

着物を着用し、楽しんで帰宅した後はお手入れを。まず、脱いだ着物は陰干し。帯や小物も一緒に汗を抜きます。しまう前に柔らかい布で汚れを払います。長襦袢は洗える素材であれば洗濯を。絹の長襦袢は袖口や襟の汚れをベンジンなどで落とします。ベンジンは目立たないところで、色落ちをしないかを確認してから使います。
半襟は取って洗えます。ただし、刺繡や絞りなどが施されているものはベンジンを使用するか、専門店に任せましょう。
足袋は洗濯機でも洗えます。足元は目立つので、汚れが気になる場合は石鹼をブラシでこするといった個別ケアをして、白さを保ちます。白足袋であれば漂白剤の使用も良いでしょう。

ファンデが付いた! ドレッシングが飛んだ!

専門店にお任せする通常ケア

着物を着ていれば汚すのは当たり前です。とくに襟や袖口は肌に触れるので、ファンデーションがついたり、薄い汚れがついたり。こうした汚れは丸洗いで対応できます。ただし、時間がたった汚れは落ちにくくなります。
また、汗もかいているので、着用したらシーズンを越さずに丸洗いをすることをお勧めします。丸洗いとは、着物の形のままクリーニングすること。
また、袖口や裾の汚れが目立つのであれば、部分洗いを依頼します。
着物を着てお出かけ。ウキウキです。ランチでフレンチレストランへ。おいしい料理に舌鼓。と、ソースが垂れた、ドレッシングが撥ねた! そんなときは慌てないでくださいね。汚れを取ろうと着物地をこするのはやめてください。その場はティッシュで水分だけを吸い取り、早目に専門家にお手入れを任せます。このとき、汚れが油・脂系なのか、水溶性なのかを伝えると処理がスムーズです。わかる範囲で伝えます。
なお、落ちないシミや汚れもしみ抜きができるので、諦めずにご相談ください。

太った! 痩せた! 裾が擦り切れた!

気分刷新、風合いを取り戻す洗い張り

長い期間、着られるのが着物の魅力です。なかには、真綿紬のように繊維が柔らかくふわっとなる過程を楽しむ着物もあるほどです。となれば、着る方の体型が変化するのは当然です。また、長年着用していると裾が擦り切れてきます。
では、どうするか。体型を戻す努力をするのもいいのですが、着物の洗い張り・仕立て直しをすることを検討してはいかがでしょうか。着物を全部ほどいて反物の形に戻し、水と洗剤で糊付けして乾燥させるものです。水洗いをするため、汚れも落ち、風合いが戻るメリットもあります。
洗い張り、仕立て直しの場合、反物の形にした後、仕立てるので、サイズを変えることもできます。そのときの体型に沿った寸法にするのです。さらに、身頃の上下や襟のとり方を変える(天地替えなど)ことできれいな面を表に使うことができます。また、紬のように裏表がないものであれば、表裏を逆にすることも可能です。
着物が洋服と異なり、長く愛用できるのはこうした工夫がされているからです。究極のエコといえるでしょう。
仕立て直しの際や八掛のみにダメージがあった場合は八掛の色を変えることも可能です。若いころに選んだ華やかな色合いからシックな色へ。見えるところはわずかですが、八掛の色を変えるだけで新鮮な気分で着用できます。また、単衣だった着物に八掛をつけて袷に。逆に袷を単衣にすることも可能です。

もらった! 若いときの着物が出てきた!

大胆リフォームで新たな命を

着物好きのところには着物がやってきます。また、若い頃の着物をどうしたらいいのかと考えることもあるでしょう。さらにお気に入りだけれど、ひどいシミをつけてしまうこともあるかもしれません。
そのようなときこそ、修正です。色を掛ける、箔を置くなどでシミを隠すことができます。また、模様はそのままに地色を落ち着いたものにする、模様の色をシックなものにするなどの染め替えで年齢にふさわしい着物にできるのです。
染め替えは模様部分を活かすのですが、模様部分にも色を掛け、色無地感覚になる丸染めは着物のまま染めるので、染め替えよりもリーズナブルです。柄はなくなりますが、地色越にほのかに見える柄に味わいがあります。
譲られた着物が地味と感じた場合、柄や箔を足して華やかにすることも可能です。
ところで、着物が小さい場合、あるいは着物としては着にくい場合は着物からコートや羽織にする、帯にする、布を活かして日傘にするなどといったリフォームができます。撥水加工もできるので、コートや塵除けにする場合はぜひ、お願いしてください。
縁があって手元にやってきた着物です。長く愛用していただきたいと思います。

お手入れ上手になるために

着物は長く着用できます。ただし、そのためにはお手入れが欠かせません。ですが、日常的なお手入れはともかく、洗い張りやリフォームといったお手入れの間隔は洋服と異なり、3年、5年といった単位になります。
長いスパンで考えなくてはなりませんから、着物を誂えるときに信用のあるお店を選びます。もちろん、他店での着物も気持ちよくお手入れしてくれるはずですが、購入したお店であれば、好みやサイズ、他にお持ちの着物や帯などの情報があるので、どのようなリフォームがいいのかといった相談や話がしやすいでしょう。
なお、お手入れのときはよく知っているお店でも必ず見積をお願いしましょう。トラブルを未然に回避できます。